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国法では、ユーザー間の債権債務関係が明瞭になっていれば、ユーザーによる極めでゆるやかなグループでもクラブと呼ぶことに特に問題はないと思われる。しかし、その他の法体系のもとでは、このようなゆるやかなグループの契約締結能力について難しい問題が生じる可能性がある。このための解決策は正式の法人組織を設立することで、その例が、ベルギー法では共同組合(Societe Cooperative)であり、英国法の保証有限会社(Company Limited by Guaramtee)であって、これらは全ユーザーによって所有されることが可能である。このような場合、フレイムワーク契約はその法人組織の一部となり、この規則に加入者が絶対的に拘束される。
他の方法は、複数または1つのTTPに各ユーザーとのフレイムワーク契約を締結させることである。これは、一種のサービス提供者契約(service provider contract)である。この方法では、ユーザーの所有する法人組織がTTP機能を遂行することができるけれども、利害の衝突や競争に関する法律問題を招くことが想像できる。したがって、ユーザー組合は完全に別の組織であることが望ましく、加入者のためにあらゆるTTPサービスを適切な組織から買うのがよいであろう。
(2)法律の改正
究極的には、流通性書類の電子的代替物のユーザー間の関係を、複雑な契約手続によるのではなく制定法によって規制することが望ましいという点では一致している。しかし、流通性書類の電子的代替物が、極めて広く普及するまでは、法律制定者がこの分野の発展に注目することを期待するのは難しいと思われる。たとえ普及した段階でも、主要貿易国内で適切な一連の制定法が採択されるまでには、議会の各種委員会による草案作成と合意を得るのに数年はかかるであろう。
このプロセスは、流通性書類の電子的代替物に関するEC理事会命令によってスピードアップすることができる。また、EC理事会命令は、様々なEU加盟国間の法律の調整を確保する役に立つであろう。しかし、実際に使用した経験が集積されるまでは、制定法の起草を開始することに興味を示す者はいないだろう。
多角的な契約に頼ることなく法的な確実性を確保するもう1つの方法は、適切な国際機関に流通性書類の電子的代替物の使用に関する条約について同意してもらうことである。流通性書類に関して実施されている法律の重要な部分がこの方法で作成されており、これが進展の「自然な」あり方であろう。他の長所は、国際条約は非常に早く標準的慣行とみなされることであり、そのためすべての貿易国がそれぞれの制定法を直ちに改正する必要がなくなる。
ここで問題となるのは、どの国際機関が適切かということである。候補としては、国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)、国連欧州経済委員会(UN/ECE)、国際商業会議所(ICC)等いくつかを挙げることができる。

 

 

 

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